グローブ型付け(中級編):アイピーセレクト内野手用はスラッガーを脅かすコンセプトグローブか?
グローブの意外な特徴から、活かすための命を吹き込む
この度、過去のブログに共感を頂いた遠方のお客様より、アイピーセレクト・グローブ型付けのご依頼をお受けしました。製作過程をレポートいたします。
1.分析
お預りしたグローブは、アイピーセレクト内野手用です。オーダー内容は、ほぼお任せで、「命を吹き込む」をテーマに行いました。アイピーセレクト・グラブの型付けは初めてになります。9月20日に開始し、先ほど(9月29日)ご返却の郵送を行いました。第一印象は、「硬い」、しかし「軽い」、そして「個性的」だと思いました。まずは、外観を観察します。



外観からは、変わった印象はありません。硬さと、軽さを感じます。次に、土手のヒモを解いてポケット内部を確認します。



最初に手を入れたときの予想通り、グリスが初めからエンド部分に少ししか設定されていません。軽さを目的としているようです。捕球裏面にグリスがあった形跡もありません。次に、最上部のヒモを解いて、グローブのクセを調べます。



ここで特徴がはっきりわかりました。最上部のヒモがないと、左に大きく傾きます。しかし、垂直に立てると左右均等に立ちます。これは珍しいです。普通は、ここまで左に傾いたものは垂直には立ちません。これがまずアイピーセレクトの個性と言えます。バランスがいいですね。右の画像は、いかに左向きかわかり、上部のヒモがないと内側に倒れます。つまり、最上部のヒモで強制的に左右比を作ってると思われます。
2.加工
分析の結果、このままで型付けしても皮革を傷つけて(革の骨を折って)しかできないようです。それは避けたいです。せっかくの軽くて硬い革を活かせません。そこで、軽いを売りにしているグローブに、やむを得ずグリスを入れます。これはつらかったです。せっかくの軽さに罪悪感を感じましたが止むをえません。



スチームはいつものように、15秒間を5回です。つぎに、金槌で革の骨を折らないように、グローブの顔を左向きから、まっすぐに直していきます。



最後に、ヒモをつけなおします。






ご覧の通り、この画像がこの型付けのハイライトでした。このグローブの最大の特徴は、意外にも「ヒモ」だったと言えます。極めて軽く、薄く、乾燥した、そして硬いものでした。いくら揉んでも柔らかくならず、このようなヒモは初めて見ました。案の定、7回切れました。別メーカー(SSK)の柔らかいヒモを新設せざるを得ませんでした。このアイピーセレクトのグローブは、ある意味、軽くて硬い、そして薄いヒモによって形成されているとも言えます。普通の皮ヒモは伸縮します。再度、土手ギリギリにもグリスを入れざるを得ません。理由は、ヒモで型を強制しても、型付けの根本的な解決にはならないので、罪悪感を感じつつも、2回目のグリスを入れることにしました。それでもグリスの量は最小限です。グリスは入れたら2日間置きますので、完成予定が伸びました。
3.完成
時間はかかりましたが、ようやく完成しました。土手の巻きも逆巻きから、順巻きにさせていただきました。お客様は、ショートやサードを守られ、手は比較的小さいとのことです。セカンド用にはやや大きく、二遊間用のウェブと外観ですが、サード用も十分です。ライン際の打球処理も可能だと思います。したがって、最初よりグリスの分は重量が増えましたが、それでも普通のグローブよりははるかに軽めです。ポケットは深めにしました。お客様が遠方の方のため、希望の形が不明でしたので、グローブの親指が、ほかの4本指のすべてに向かえるようにしてあります。親指がどの指とあわせるかは選んでいただけます。また、ポケットも、握り方次第で浅くなるはずです。お客様がこれから、本当のお好みに型付けできるように加工しました。
レポートは以上です。大変勉強になりました。追伸:型付けしたグローブはコロコロと転がります(右端写真)


